ダニー・ケイ・ショーに出演して・・・
1966年11月
ピーナッツのアメリカ便り“ダニー・ケイショーのスタジオにて”
皆様お元気ですか?日本を離れでもう一ケ月になります。
今日、副杜長は仕事の事でラスベガスヘ。だから今夜は私達二人っきりなのです。
二人っきりになると“何を食べようか?”と頭をかかえる始末。結局、即席ラーメンですませてしまいました。
いろいろおかずを入れて結構おいしかった-食事が終ったらドイツ語の勉強に励んでいます。
ドイッヘ行ってあわてるよりは、今のうちドイツ語の唄を全部覚えていた方がいいと考えたからです。
“ダニー・ケイ・ショー"の方も一回、二回と無事に終えていますが、ほんとうにこっちは仕事に関してきびしく、冷たいものだと思います。
仕方がないからとか、可哀想だからという同情はいっさいありません。
このショーは、一回ごとにお客を入れてやります。一回目の時、月ちゃんが転んでしまいました。
踊りの人が月ちゃんをおろす時タイミングが合わず、スッテンコロリと転んでしまったのです。
その時はどうしようかと思いました。
看護婦さんがとんで来て大変だったけど身体の方はなんともなく、足がちょっと黒ずんだだけでした。
それより、皆んなに申し訳けなく、ダニー・ケイの所にすぐあやまりに行ったら
“そんなこと心配するな。それよりもピーナッツの身体は大丈夫か"と親切にいってくれ、スタッフの人達も会うごとに気をつかってくれるので、なんだか余計に申し訳ない気持で一杯でした。
踊りや歌に対しては大変きびしくて泣き出したくなることもありますが、仕事を離れるとやさしさや暖かさを一層、身にしみて感じさせられます。
番組で歌う三人
“エド・サリバン・ショー”“ダニー・ケイ・ショー”と一年のうちに二つの大きな番組に出演したピーナッツ。
お二人の話では番組に3回分出演したと言うことですが、じゃあ何を歌ったのかと言うとはっきりと記録が残っていません。
そこで“宮川先生なら何かご存知かも”と“MIYAGAWA WORLD”の管理人さんに機会があったら宮川先生に聞いていただけないかと無理なお願いをしてみました。
そうしたら先生に直接お会いした時に聞いてくださいました。
“あの時は確かスキヤキを歌ったんじゃないかな”と返事をいただきました。
ピーナッツのお二人の会話からダニーさんは“日本語”の歌がお気に入りのようなことを言っておられるので
日本語で“スキヤキ”を歌ったのかな、なんて想像しました。
それ以上のことはわかりませんでしたが、そういえばアポロンのテープ復刻盤CD“びっくり!お宝名曲集”の中に“上を向いて歩こう”が入ってるんですよね。もしかしたらこの時のダニー・ケイ・ショーのことがあったからその譜面でこの歌を録音しておいたのかも、と想像を膨らませました。
“恋人よ我に帰れ”もアポロンの方に録音が残されていたし。

今回は同行した副社長(当時)の渡辺美佐さん交えての回顧録です。
YOUNG1966年11月号より

−お帰りなさい・・・・・・
さっそくですが、ヨーロッバとアメリカを比べると、ショービジネスの点でちがいますか


エミ ちがうわ-大変なちがいだと思うな
ユミ それを比べるんだったら、日本とヨーロッパを比べた方が適切ね。日本の方が発達しているし
エミ アメリカナイズされてるもの。ショービジネスの点でもね
ユミ ヨーロッパっていうのは昔から白分の国を大切にしてるでしょう。
だからアメリカはアメリカ、白分達はこういう生き方をしてるんだっていう考え方ね
エミ だけど、芸能関係っていうか、タレントとしてはアメリカの方がレベルが上だし、のびると思うわ。
何万人というタレントが、毎日毎日競争しているし、いつ自分が落ちるかもわからないっていうのですごく勉強してるし・・・
ユミ 今までに、ドイツや、アメリカヘ行って来たけど、今回がいちばんきびしかったわね(笑)
エミ 勉強になるきびしさと、神経的に疲れるきびしさと両方なの。
でも今回の場合は神経的なきびしさの方だったわ
ユミ 必死になって・・・なんとかして白分の力を発揮しようという気持で一生懸命だったし出来上ったものを皆んなに認めてもらおうと思うのが先決問題だったの

−これから日本で歌手活動を続けていく上でこういうことを勉強したらいいんじゃないか
   ということがありますか


エミ それはいろいろ考えたことなんですけど、結局アメリカと日本を比べることが無理なんだと思うの。
ユミ というのは、アメリカのタレントって朝から晩まで、それ一本の為に必死になってやってるわけ。
その一本に生活がかかってるのよ。それには頭が下るわ。
だからといって、日本でそれが出来るかというと、やはり日本では、たくさん仕事をしないと食べていけない・・・そういう問題になってくるのよ。
だから、気持としてはそういうことを見習わなくちゃいけないと思うけど-
エミ それをどう実行するかとなると、すごくむつかしいことになるのよね
ユミ だからといって、日本がこのままでいいとは申しませんけど・・・

−ダニー・ケイショーの中で歌った曲のうち、彼にいちばん喜ぱれた歌ってどういうのがありますか


エミ そうね。ダニー・ケイと一緒に歌ったのは二曲しかないの。三本の中で
ユミ 一緒に歌う歌はキャッキャッさわいだり喜んでくれたりで(笑)
エミ 日本語で歌ってくれたの。
"スパニッシュフリー”と“オール・マクドナル・ヘッド・アット・タウン"の二曲なんだけど、楽しかった。
歌詩も副社長と三人で考えたりして(笑)
ユミ なにしろ、ダニー・ケイがすごくよくしてくれたわね。
可愛がってくれて。あんなことはないっていわれる位よくしてくれて・・・
エミ それで年のこともあるのよ(笑)
ユミ ひどい時には十二、三才に見られちゃうし(笑)若く見られるっていうのはトクだと思うけど…(笑)
エミ 平均して十五、六才に見られたわね。私達の格好によって違うの。
ドレッシーにすると大人で、ショートパンツやスラックスだと十二、三よね(笑)
ユミ アパートで私達がお皿洗ったりなんかするでしょう、そんな時、たまたまメイドさんが見て副杜長にいうの“あの子供達はなんて賢い子たちなんでしょう"って…・(笑)
それで皆んなで大笑いしたこともあるの(笑)
エミ そうよね、親がなんにもいわなくても黙ってお皿を洗うなんて(笑)副社長が、私達の母親になったリして(笑)時には三人姉妹だって・・・(笑)
ユミ ずっと自炊してて面白かったわ。料理といってもメチャクチャなの。
お肉があれば焼いたり……便利なもので、全部インスタントがあるの。
マーケットに行くとそれを買って来て作るの。
エミ スーパーマーケットヘ行くのが楽しみで“今日はお醤油がないから”とか“”玉子がなかったわよ”なんて……やっぱり女性だなアって思ったわ(笑)
ユミ いい経験だったわ。お料理は副社長が上手なんだけど、それに輪をかけて社長が上手いのよ(笑)
十年来、料理なんて作ったことがないっていいながら、ステーキなんてサッと作っちゃうの。
おいしいんだ、それが-(笑)
エミ 一週間ぐらいずっと作ってくれたわね。
私達が寝てると“さあ!ごはんが出来たからピーナッツ起きなさいよ”なんて……(笑)
ユミ 社長のかくれたる才能よ(笑)ほんとにびっくりしちゃった(笑)

(ちょうどこの時、波辺美佐副社長がみえる)


美佐 どうも遅れて……
ユミ いま、社長の料理のことを活してたの
美佐 そう。それが上手いのよね。(笑)
何かほしいものはないかとか--例えばコブ茶が飲みたいっていうと"ハイ出来たよ"ってもって来てくれるの。“メシが出来たよ”とかさ(笑)

ダニー・ケイショーを一本とるのにどれくらいの日数をかけてるのですか

美佐 正味四日間位。それで、日本みたいにレヅスンなんかはしてくれないのよ。
自分でレッスン料を払って、別のところへ習いに行くのよ。だんどりをやってくれるだけなのよ
エミ 振りつけはちゃんと振りつけの人がやってくれるのよ
ユミ だから自分で練習をしなくちゃいけないの
美佐 これはこう、あれはこうって二、三回教えてくれるの。
あとは自分でやりなさいってわけ。
で、次の日行ったら、まわりの人とのバランスとか、まとまりを見るために、又やるわけ。
カメラの位置をきめたり…日本みたいに、その人が上手くなるまで見てることはないわけよ。(笑)
そして、リハーサルで時問がのびるってこともないわね。
たとえ、ある人が振りをまちがえようが、そんなことは関係なく、パッと時間がくれば終りなのよ
エミ お客さんが見ているところでやるから大変ね
ユミ 客席が150位かしら
美佐 二百人は入らないわね
エミ も、フロアーは広いわよ
美佐 だから、それに比べると日本のスタジオはレッスン場みたいなものね(笑)
それに、スタジオに入る時は、すでにタレントして入るでしょう。
日本では、前から決ってても、スタジオに入ってから台本を読む人もいるものね。
そんなことはないわね。スケジュールだけを見ると簡単そうに見えるけど、つまリ一日に一時間か二時間で終りなわけでしょう。
ところがそれで遊ぶわけにはいかないわよ。かえってレッスンをやらなきゃ
ユミ あまりやってくれないから余計に心配なわけよ
美佐 たとえば、ある人が間違ったりすると全員が、その人を白い眼でみるの。
連帯責任みたいなもので…
ユミ ごめんなさい!なんて絶対にいえないもの。全体がそういう雰囲気なのよ
美佐 だから、今日は仕事が早く終ったから飲みこ行こう…なんていう人は一人もいないわよ。
本番が終わるまでは死に物狂いね(笑)

−今度は向うでミュージカルなどはご覧にならなかったのですか


エミ あまり見れなかったわね"ナンシー・ウイルソン"だけ見たの。
ユミ それより、ほらコーラスがよかったじゃない。スクール・メイツみたいなのが
エミ よかったわ!どっちかというと、ナンシー・ウイルソンは食われてたわね。
それがスクール・メイツ位の年令かな、もう少し上かしら、でもあれくらいの感じなんだけど、
振り付けといい、照明といい、舞台構成といい……パッチリなの
ユミ ほんとよかったわ。
別にむつかしい踊りじゃないんだけど、それにしても、間違わずにそろってるのには感心したわ
美佐 そうね。絶対に間違えないわね、向うの人は!(笑)
ユミ ショーの中の踊りも上手いし
美佐 だから、向うの人っていうのは仕事に望む気持が違うのよ。完全主義なのよ。
そりゃあ、向うの人は覚えるのは遅いわ。ビーナッツの方がずっと早いくらい。
でも、覚えてから自分のものにするのが早いのね。又、それを白分の財産にしちゃうのよ。
一生使うつもりなのね。日本の場合だと、覚えたらすぐ忘れてしまわないと、つまり本番が終ったらね。
そして次のを覚えなくちゃいけないじゃない。みんな消耗品にしてるでしょう。
それだけ覚え方が違うのね。
エミ 私達は無我夢中だったわ
美佐 だけどピーナッツは成長したと思うわ。
急には無理でしょうけど、段々にその成果が出てくるんじゃないかな
ユミ あまり期待されると困るんだけど…
美佐 心配なのは、こっちに帰って来て、日本は芸能人天国だから、有名な人であれば"あゝあの人がこれだけ上手くなったなんてことは関係ないわけじゃない。
たとえ上手くなくったって、名前があれば通っちゃうでしょう。
つまり、上手、下手は関係ないのよ。
そういうとこに戻って来て、ビーナッツが“向こうではこうだった!自分たちはもっとやらなくちゃやらなくちゃ”と恩ってみても、周囲の人達がのんびりなわけよ。
"まあ、これでいいや。てな調子で過しているわけでしょう。
その方がラクでいいもんね。自分にきびしてしなくてもさ。
だから、ラクなとこに来ちゃって“又、もどっちゃったネ”なんてならなきゃいいと思うけど、本当にこっちはラクよ。
だから、あとからあとからタレントが出て来ちゃうのよ。
ユミ 中味より外見だけでね
美佐 アメリカではいくら名前が通っててもちょっと声が出なくなったりしたら大変なことよ
ユミ つまり、そのきびしさよね。
私達歌をやってて8年になるけど、これほどまでにきびしいものを体験したのは初めてだわ
美佐 ダメだといわれたら大変だと思うから心配になるのね
エミ なにしろ本番が終るまで必死でしょう。その一週間の疲れることったらないのよ(笑)
ユミ 本番が終った時は嬉しいっていうよりもヤレヤレ終ったとガックリ(笑)
美佐 そしてまだあるのよ。本番が終ると、次の週もやるかが心配なのよ。
つまり“お呼びがくるか”ということよ。皆んなの反響やミーティングによって決るの
ユミ それを待つつらさ……(笑)
エミ だから私達三人でいってたの“これで来週は呼ぱれなくても後悔しないネっ”て。
つまりそれだけ完壁な仕事をやってきたし、精一杯だったもの
ユミ もう、三週間やって終った時はガックリで“ネエ、又次もっていわれたらキャンセルしようよ。
日本へ帰ろうよ”(笑)なんてネ
美佐 そうだったわね。大変だった。
それに番組自身が視聴率が悪く、評判が悪けれぱ“ハイ、来月から中止。なんてことになっちゃうの。
だからダニー・ケイにしたってブロデューサーにゴマをすってるの。
よくわかるわよ(笑)プロデューサーの秘書にゴマするんだもの
エミ 日本だと有名になればタレントの方が強い場合があるのにね(笑)

−最後にヨーロッパでの話を

美佐 もうすごい歓迎ぶり!(笑)驚いたのったらないわね(笑)
ユミ オランダでももみくちゃだったし、報道陣がすごいのよね(笑)
エミ 私達、飛行機の中でグーグー寝て、お化粧もしていないし、アワをくっちゃった(笑)
ユミ インタビューもサングラスをかけっぱなしでやったのよ。
ねぽけまなこじゃ申し訳ないものね(笑)
美佐 ピーナッツも一年ぶりの訪問でしょう。だからまさか、と思ってたの。
ところがテレビのフイルムが流れている為に有名になってたのよ。
どの新聞にも一面に大きく“ザ・ピーナッツ”って出てるんだもの。
そして一流の劇場に出演すると、トニー・ベネットやアストラッツ・ジルベルドなどよりも扱いが上なの。
皆んな一曲づつしか歌わせてもらえないのにピーナッツは四曲歌ったり…
ユミ オランダのテレビで、宥名な人ばかり出演する番組があるの。
そこでは出演者に必らずインタビューがあるの。たとえ兄弟は何人かとか−
エミ そして譜面が読めるかとか。
そしたら“ピーナッツに譜面が読めるかなんて聞くのは失礼だよ!(笑)
サミー・デイビス・ジュニアに譜面が読めるかって聞けるかい?”だって…-(笑)
そんなユーモァもたっぶりだし、私達も高く評価されてたわけ
美佐 だからヨーロッパではあまりの歓迎に驚ろかされ、アメリカではいろんな面でのきびしさを身につけ、二ケ月間はほんとに有意義だったわね
エミ ほんとに、この経験をこれから我が日本で生かさなきゃア
ユミ そうね。まだ外国ボケはしているけども−(笑)やりましよう!
エミ 10月29日から11月1日まで新宿コマ劇場で“おかえりなさいビーナッツ”っていうのをやったけど…
ユミ 帰国後、初めてのショーだけど、どうだったかしら?
エミ それはファンの皆様の批評を聞かなくちゃあネ
ユミ そうね。聞かせて下さい!
 
やはり大手事務所の副社長としての立場なのでしょうか、美佐さんの言葉の端端に、ザ・ピーナッツはすごいわよ、というニュアンスが見え隠れ。
ピーナッツ自身はやっぱり謙虚、ひたむきさが現れてると感じます。いわゆる自信家ではないですね。
そんな所が好きなんだけど。
アメリカ進出もこれで軌道に乗ったかに見えたものの、派手な活動はこれで一段落になってしまいます。
もちろんドイツでのレコーディングやショー出演などは今後もしばらく続くので、やっぱりピーナッツはドイツ(あるいは会話の中にも出ていたヨーロッパの芸能活動)が性に合っていたのかなと言う気もします。

帰国後のテレビやラジオなどではさかんに「日本語のオリジナルを歌っていきたい」と言うことを話してるんですよね。
よく外国に長く居た人たちみんなが言うと思うんですけど、外に出てあらためて日本の良さがわかった、と言う言葉。ピーナッツもあてはまるんでしょうかねぇ。
「ローマの雨」を大プッシュしてました。

しかし・・・大体日本人は欧米人から見ると幼く見えるらしいけど、このときすでに25歳になってたピーナッツが12、3才に見えたって?ホントかしら。

あと、いつも一緒に居る井本さんて外国へは行かなかったのでしょうか?
もしそうだったら彼女は日本で何してた?



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