★このCDは、1970年6月レコーディング、8月発売の、主にカーステレオなどに搭載されていた8トラック・カートリッジのみの発売だったもののCD化です。
ジャケットを見てわかるように、「キングCD文庫・ホッと倶楽部」シリーズの一枚です。
★はじめこのCDの発売を聞いたとき、1960年の「ピーナッツ民謡お国めぐり」(lkf-1069)の復刻かと思いました。でも解説にあるように1970年の新録音で、全く別のものだとわかり、これはすごいものが残っていたなと思いました。
★昭和30年代にはレコード、ステージ、映画にと民謡はザ・ピーナッツの重要なレパートリーだったのが、昭和40年代に入るとだんだん減ってゆき、1971年(昭和46年)のLP「ダブル・デラックス」(skw-19.30)の2枚目に収録されている「ノスタルジック・ムード」と題された童謡・唱歌を歌ったものが出るまでしばらく遠ざかっていたものと思っていました。
それがカートリッジだけで発売されていたというのは、驚きです。
先の5月に発売されたデビュー40周年記念の「カヴァー・ヒッツ」と題された2枚も同じ頃の発売なので、ずいぶんたくさんアポロンから出ていたんだなぁというかんじですね。
★このCDを聴いて感じたのは、これは民謡集じゃないなということです。
日本の民謡という素材を使ってはいるものの、アレンジ、ヴォーカルのどれをとっても民謡ではないですね。うまい言葉がみつかりませんが、解説を書いていらっしゃる黒沢進氏の言葉を借りれば「ソフト・ロック調だったり、ジャズ・ロック調だったり、ファズ・ギターを多用したり・・・・どれもサウンドは1970年代を反映したものとなっています。勢いまかせだった60年の「ピーナッツ民謡お国めぐり」とはかなり趣が違います。まさに、これぞ日本の高度成長がピークに達した大阪万博の時代らしいピースフルでビューティフルなピーナッツの民謡集といえるでしょう」とありますが、最初これを聴いた時は、あまりのサウンドに正直言ってとまどいました。ちょっとついて行けない感覚だったですね。
それでしばらく聴いていませんでした。
最近になって1960年の「ピーナッツ民謡お国めぐり」を聴くことができて、あらためてこのCDを聴いてみようという気になったのです。
★あらためておちついて聴いてみると、あちらこちらに斬新な解釈のアレンジが見えてきて、おもしろくなってきました。
過去に歌っているものもあり、それらはピーナッツの声の変遷を感じることができ、やはり勢いまかせという言葉がぴったりくるのか、昔のものはストレートな歌い方ですね。
★3曲目の「おてもやん」のイントロはどこかで聴いたような、なんていうか70年代の音というか、なんだろうこの曲は。んーーーしばらく考えて出てきたのが「巨泉・前武・ゲバゲバ90分」という番組の中でコントをやっている時に、バックに流れていたような音楽なんですね。
そう思って以前買っていた「ゲバゲバ90分・ミュージック・ファイル」(VAP
VPCD-81254)を取り出してみると、なんとこの番組の音楽担当が宮川先生だったんですねぇ。
そういうことだったのかという感じです。同じ時期にいろんな仕事をしていても、なにか共通するものがあると思いました。
★7曲目の「木遣りくずし」は江利チエミが取り上げ、彼女の歌がヒットしそのイメージが強かったのですが、ここではやはりびっくりするようなアレンジで、まったく違う「木遣りくずし」になっています。個人的には江利チエミバージョンのものがとても好きなんですが。
★このCDは、今年のザ・ピーナッツ40周年のシリーズとして出しても良かったんじゃないかなという気がします。他のものと十把ひとからげではなく、ザ・ピーナッツ単独で、ね。
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